
バンダイナムコ、コナミ、セガのアーケードゲーム用ICカードが、今夏以降に統一仕様となることが発表されました。名称は「アミューズメントIC」となり、ロゴマークも公開されています。今後は各社からこの仕様に沿うICカード・サービスが提供されることとなります。
アーケードゲーム用ICカードとは?
ゲームセンターなどで稼働しているアーケードゲームの中には、インターネット回線に接続され、ユーザーごとのゲームの進行状況などのデータ(平たく言えばセーブデータ)をサーバー上に保存する機能を持つものがあります。このデータを呼び出す際、ユーザーを識別するために多くの場合用いられるのがICカードです。
現在、こうしたユーザー識別のためのICカードを、アミューズメント大手であるバンダイナムコ、コナミ、セガの3社は、個別に販売しています。


このうち、バンダイナムコエンターテイメント提供の「ポッ拳」、「太鼓の達人」、「ガンダムエクストリームバーサス」シリーズなどに対応した「バナパスポートカード」(バナパス)と、セガ・インタラクティブ提供の「艦これアーケード」、「maimai」シリーズなどに対応した「Aime」は、共に近距離無線通信規格「MIFARE Classic」(NFC Type A準拠)を採用。バナパスとAimeはすでに相互利用可能となっています。
また、コナミアミューズメントは「クイズマジックアカデミー」、「麻雀格闘倶楽部」、「BEMANI」シリーズなどで使用できる「eAMUSEMENT PASS」(イーパス)を販売していますが、こちらは2016年4月まで「NFC Type V」が用いられており、バナパスやAimeとの相互利用には非対応です。

【予想】アミューズメントICは、どのようなものになるのか?
現状異なる規格を採用している3社のゲームで、共通利用できるというアミューズメントICは、どのような仕様になるのでしょうか? 現段階で詳細は発表されていませんが、ある程度の予想は可能です。そのヒントとなるのがこちら。

3社のアーケードゲームは、「おサイフケータイ」対応携帯電話を、ICカードの代わりとして利用することができるようになっています(一部機種を除く) 。おサイフケータイは「FeliCa」(NFC Type F)を採用しているので、3社のゲーム筐体はいずれも、FeliCa対応のICカードリーダーを搭載しているということになります。実のところ、2016年4月より販売されている新デザインのイーパスは、従来のNFC Type VカードからFeliCaカードに切り替わっています。
これらのことから、アミューズメントICはいずれのメーカーのゲームでも読み取り可能なFeliCaを採用することが推測されます。コナミ同様に、バナパスとAimeもMIFAREからFeliCaへの切り替えが行われ、相互に利用できる形になっていくのではないでしょうか。日本で広く普及し、あのiPhoneですら対応を迫られたFeliCaが、ゲームセンターでも主流派になっていくことが予想できます。
現時点でも、おサイフケータイ対応機種を利用すれば、3社のゲームのユーザーデータをひとつにまとめることは可能ですが、それとは別にゲーム用のカードを持ち歩いているユーザーにとっては、利便性が高まることになるでしょう。
また、3社のICカードは、ユーザーデータのウェブ上での閲覧などが行えるオンラインサービスと紐付けするためのIDナンバーを別個に持っていますが、こちらについても統一化されるのかは、注目すべき点であると言えるでしょう。*1
コナミとライバル社、“融和”はさらに進む?
コナミとその他のアミューズメントメーカーの関係について、コナミが提起した特許訴訟をきっかけに長年埋まることのない深い溝ができているという話が、インターネット上では頻繁に語られてきました。その真偽はさておくとしても、バンダイナムコとセガ(やタイトーなど)の間では、タイアップやコラボレーションなどの協業が積極的に行われてきたのに対し、コナミとの間にはそういったものがほとんど存在しなかったというのは事実でした。
しかしながら近年、アーケードゲーム機向け電子マネー決済端末「シンカターミナル」やセガの音楽ゲーム「チュウニズム」での開発協力、音楽ゲームのコラボイベント「天下一音ゲ祭」の開催など、各社の接近が感じられる話題が増えつつあります。
今回発表されたICカード仕様統一の合意も、こうした流れの中で形成されたのは自然なことであると言えるでしょう。
あくまで個人的な推測ですが、コナミは看板タイトル「beatmania」にて取得した特許の期限が今夏に迫ることもあり、ライバル企業との付き合い方を見直すようになったのかもしれません。縮小しつつある市場の中でパイを奪い合うよりも、共同でそのパイを増やすことを考える方が、利するところがある、と。
このような想像が真意かは、もちろん明確には分かりませんが、一消費者としては、ゲームメーカー同士が手を取り合い、業界を盛り上げていくことには大いに賛成です。今後もこうした各社の協力関係が維持されていくことに期待しています。
余談・NESiCAは……?
タイトーは上記3社と同様のサービスで利用できるICカード「NESiCA」(MIFARE Ultralight採用)を発行していますが、同社のアーケードゲームはおサイフケータイ非対応のため、コナミとタイトーの両社を含む統一仕様の制定は難しいものと思われます。タイトーが、アミューズメント大手でありながら、今回の合意に名を連ねていないのは、このあたりの事情ゆえと推測できます。残念。そんなに残念でもないか。
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*1:仮に統一されると、紛失時の利用停止手続きが簡便になることなどが期待できます