先日、「COMPUTEX TAIPEI 2016」内で開催された台湾ASUSのプレスカンファレンス、「Zenvolution」にて発表されたZenFone 3シリーズ。3モデルとも前シリーズ同様デュアルSIM機です。
フラグシップモデルのDeluxeは、Snapdragon 820と、6GBのRAM、最大256GBのフラッシュストレージを搭載した新生スペックモンスターです。個人的にも非常に気になっているのですが、インターネット上ではひとつホットな話題があります。
日本でもデュアルスタンバイ対応か
驚くべきことに、ZenFone 3シリーズでは4G+3Gのデュアルスタンバイが可能であるとの検証結果が出ています。
他社製品としては、中国XiaomiのMiシリーズ最新モデル群が、同様に4G+3Gでの同時待ち受け可能との報告が上がっていましたが、こちらは日本国内での展開予定が立っていません。ZenFoneシリーズはすでに国内での販売が行われており、3もほぼ間違いなく日本版が登場するでしょうから、一般の人にとっては初の4G+3G同時待ち受け機になると思われます。
デュアルスタンバイとは
一口に「デュアルSIM」と言っても、挿入中の2枚のSIMを手動で切り替えて使用する「Dual SIM-Single Standby」(DSSS)、挿入中の2枚のSIMが同時に待ち受け可能である「Dual SIM-Dual Standby」(DSDS)、挿入中の2枚のSIMが同時に通信可能である「Dual SIM-Dual Active」(DSDA)の3種類があります。DSSS機は結局のところSIMを差し替える手間が省ける程度のものですが、DSDS機やDSDA機は2枚のSIMを事実上1枚とみなすような運用が可能になります。
ポピュラーな例としては、「通信速度は遅いがエリアの広い2G SIM(音声)と、エリアは狭いが通信速度の速い3G/4G SIM(データ)とを組み合わせる」「都市部での接続率・通信速度が優秀なA社のSIMと、地方部での接続率・通信速度が優秀なB社のSIMを組み合わせる」などがあります。
2Gなき日本
上記のようなデュアルSIMの端末は、以前より「3G/4Gで通信できるのは、同時に1枚のSIMのみ」という制約があるものがほとんどでした。事実、ZenFone 3シリーズもスペックシート上はそのように記載されています。すなわち、4G+2Gもしくは3G+2Gということになります。
これでは、日本ではデュアルスタンバイやデュアルアクティブを活かすことはできません。日本ではすでに全ての2Gサービスが終了しているからです。*1
これがもし4G+3Gでの同時待ち受けが可能なら、日本国内においても活用する方法があるわけです。
日本ではMNO3社のエリアカバレッジがいずれも世界的にみてかなりの高水準にあり、またその品質も実使用上大きな体感差が出るほどではない程度に整備が進んでいますから、前述のような活用法はあまり意味がありません。しかし、ここ数年の間に、国内ではMVNOのサービスがかなり発達し、なかなかの低価格でデータ通信を利用できるようになりました。これとMNOの音声回線を組み合わせることで、携帯電話料金を相当な節約を目論むことができます。
プラン考察
具体的に運用プランを検討していきたいと思います。計算が手間なので消費税とユニバーサルサービス料はここでは省きます。
データ
ISP料金も含めて、データ通信料金は、MNOよりMVNOの方が圧倒的に低コストです。現在、IIJmioやmineoなどの主要なMVNOは、「月間データ量3GB/月額900円」というのがスタンダードになっています。ひとまず、この価格で話を進めていくことにします。
音声
音声回線をMNOに頼る大きなメリットとしては、
- 家族間通話が無料となる
- 音声通話定額が選択できる
の2つが挙げられます。*2
単に家族間通話が必要なだけであれば、いわゆる旧プランがよいでしょう。
- FOMA(docomo 3G)SIMはLTE対応機器では利用できない
- Xi(docomo 4G)はすでに旧プランの新規受付を終了している
- au 3GはCDMA2000なのでLTEとのデュアルスタンバイができるか不透明
- au 4G LTEはパケット定額サービスへの申し込みが必須(新規)
- SoftBank 4G LTEはSIMのみの契約の場合旧プランを選択できない
以上の理由から、SoftBank 3Gの「ホワイトプラン」を選ぶことになるでしょう。「ホワイト家族24」により、家族間通話が無料となります。
音声通話定額、つまりいわゆる新プランを選択する場合は、docomoの「カケホーダイライト」とSoftBankの「スマ放題ライト」はパケット定額サービスへの申し込みが必須であり、SoftBankの「スマ放題」(スマートフォン向け)はISPへの申し込みが必須なので、選ぶべきはdocomoの「カケホーダイ」になるかと思われます。
端末代金
ZenFone 3の国内販売価格は未発表ですが、米ドル価格が249ドルからであることを考えると、32,800円ほどではないかと予想できます。MNO同様に24ヶ月割賦のつもりで購入するなら、1ヶ月あたり1,367円といったところでしょうか。
ZenFone 3 Deluxeは米ドル価格が599ドルからなので、同様に考えると1ヶ月あたり2,700円ほどでしょうか。
以上を組み合わせると次のようになります。
- ホワイトプラン+MVNOデータSIM+ZenFone 3
934+900+1,367=3,201(円)
- ホワイトプラン+MVNOデータSIM+ZenFone 3 Deluxe
934+900+2,700=4,534(円)
- カケホーダイ+MVNOデータSIM+ZenFone 3
2,700+900+1,367=4,967(円)
- カケホーダイ+MVNOデータSIM+ZenFone 3 Deluxe
2,700+900+2,700=6,300(円)
- (比較)カケホーダイ+spモード+データSパック+実質0円端末
2,700+300+3,500+0=6,500(円)
一番上のプラン組み合わせは、MNOの標準的なプランの半額以下です。これで必要十分なスペックの端末、無料の家族間通話、3GBのデータ量が含まれているのですから、かなりの経費節減になりますね。カケホーダイを選んだ場合も、それなりに高くはなりますが、それでもMNOの価格を下回ります。*3
長くなりましたが、日本版ZenFone 3が本当に4G+3Gデュアルスタンバイに対応しているならば、相当安価にスマートフォンを利用できることが分かるかと思います。実際には仕様の変更が入ることも考えられるので、発売されるまでははっきりしたことは言えませんが、期待に胸を膨らませるくらいはしてもいいかと思います。とにかく発売が楽しみですねえ。
(2016年7月10日:記事中の誤字脱字を訂正しました)